夜のうちからひどく冷え込んで、これは雪になるかもと思っていたところ、翌朝は本当に積もった。
静かな朝、黒鋼が台所に向かう途中、ファイの部屋の前を通りかかり中の様子をうかがうと、ファイはまだ眠っているらしかった。
今日はふたりとも休みだからもう少し寝かせてやってもいいだろうと、黒鋼は居間のいろりに火を付け乾燥して痛む喉を水で潤した。
しかししばらく経ってだんだん部屋が暖まってきてもファイは起きてこない。
いつもは早起きのファイは、頼んでもいないのに黒鋼を毎朝うっとうしいやり方で起こしにくるのに。
どうせ寒さのせいで布団から出られなくなっているんだろうと部屋に行ってみると案の定で、ファイは起きてはいるが布団にくるまって体を丸めていた。
「おい、もう起きろ」
「うー、朝ごはんなら昨日の残りがあるからそれ食べて・・・・・・」
「向こうの部屋、火付けてあるからこっち来い」
「お布団あるからオレはここでいいよぅ」
もぞもぞと黒鋼に背を向けてさらに丸まってしまう。
こんな動物をどこかで見たような、と考えながら黒鋼はファイの布団に手をかけた。
「ほら、さっさと出て来い」
「やだー!オレはこんなに布団を愛してるのに、それを黒たんは引き離そうって言うの?」
「またくだらねぇことを・・・・・・布団はおまえのこと嫌いっつってたぞ」
「言ってないよ!」
とっさにがばりと体を起こしたファイを布団から引き抜いて抱きかかえると、細い体が寒さに震えた。
「わー寒いよー黒みゅうひどいよー」
暖かさを求めて黒鋼に抱きつくファイの背をなでてやると、少し震えはおさまった。
「おまえ、年々寒がりになってないか? 元いた国はもっと寒かったんだろ?」
「うん。でも日本国の気候に慣れちゃったみたい」
「そりゃあ、いい傾向だな」
ファイが首をかしげて黒鋼を見つめる。
「体質がこの国のものになっちまえば、こっちのもんだろ」
そう言うとファイが呆れたように笑って黒鋼の肩に額を乗せる。
「そんなの、もう十分手遅れだよ」
「ならいい」
隙間風が入ってファイの部屋は冷やされている。
このままでは風邪をひいてしまうと、ファイを抱いたまま立ち上がろうとすると腰をつかまれ阻止された。
「寒いからもうちょっと・・・・・・」
「だから向こうは火ついてる。それと上に何か着とけ」
「ううん、いらない」
「いらないって、おまえあんだけ寒がっておきながら」
「暖めてくれる人がいるから、いらないよ」
試すような目でファイに見上げられ、黒鋼は望み通りそのままファイに覆いかぶさった。
この寒さでは昼になっても雪は溶けないだろう。
あらゆる雑音を吸収する白さのなかでは、本意だけが浮き彫りにされる。
終わり
うちの黒鋼さんは、ファイさんがいつか日本国を出て行ってしまうんじゃないかと内心ビクビクしてる
だからたまにヤンデレたりもする
[5回]
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