新世界
青い空、白い雲、透明の海。
地平線をカモメが飛んで、遠くでイルカがジャンプする。
ここは人間以外の生き物しか生息しない無人島。
ぐるっと一周歩いて回っても1時間もかからないほど小さな無人島。
ぎらぎらの太陽が照り付けるなか、少年と少女は帽子をかぶって島を探検中。
羽根の気配はこの島の中心からするとモコナが言うので、そのあたりを捜索していることだろう。
そして別れた大人ふたりは今日の晩御飯の準備を担当。
と言っても、暑さに弱いファイはさっきから日陰で座り込んでしまっているけれども。
「暑くないの?」
いつもと変わらぬ無表情で、島を覆うジャングルの中から汲んできた水を沸騰させる黒鋼にファイが倒れこむように抱きついた。
「暑いに決まってんだろ。引っ付くんじゃねぇ」
「暑いよぅ、枯れちゃうよぅ。ちょっとでいいからあとでお水ちょうだい」
弱々しい声でファイがねだると、黒鋼はあとでなと言ってファイを引き剥がした。
するとファイはそのまま砂浜にぱたりと寝転んでそばにあったタオルをつかんで目の上に乗せた。
黒っぽいカニが腕のあたりを移動している。
「海入ろうかな・・・・・・」
「やめとけ」
「なんでー?」
「おまえの肌、日焼けしたらひどいことになるぞ」
「あーそっかー。なーんだ、オレの裸に欲情しちゃうからーとかじゃないんだー」
「・・・・・・・・・・・・」
「あれっ!? 否定しないの!?」
慌てて飛び起きると、黒鋼はファイに背を向けてもう一つの容器の水を沸騰させているところだったので、聞こえなかったのだろう、そうに違いないと結論付けてファイはまたごろんと寝転んだ。
「もしさぁ、このまま羽根が見つからなかったら、ここで4人とモコナで暮らすのかなぁ」
返事はない。
「そしたら小狼君とサクラちゃんの子供ができたりしてー、その子供にも子供ができて、王国みたいなのができちゃったりしてー」
「そんなになる前に魔女に頼るなり何なりしてるだろ」
がごん、と重い音がして新しい水が火にかけられたのがわかった。
「でもオレたちだけだと黒たんが欲求不満に陥っちゃうかもー? 欲望に任せてサクラちゃんを襲ったりしないでよー?」
「それは絶対あり得ねぇな」
「どしてー? 黒さまは本能に逆らえるような人間じゃないでしょー」
「仮にそんな状況になったときは、おまえを襲う」
「・・・・・・あははー、黒りんってそんな冗談も言えるんだねー。暑さで頭おかしくなったー?」
「・・・・・・そうかもな」
寝返りを打って、ずれたタオルの隙間から黒鋼を窺い見ると、額から汗を流して火の具合を調整していた。
「んー、じゃあオレもおかしくなったのかもー」
潮のにおいと、焼けた砂のにおいと、隣の男の汗のにおいがする。
「仮にそんな状況で黒ぴーに襲われたら、オレ、喜んで腰振りそう」
あはははは、と自分で言っておいておかしくなって狂人みたいにファイは笑った。
END
「どっちにしろ、おまえが一ヶ所に長く留まれない限り、そんな状況にはならねぇけどな」
「あ、そうだった」
[2回]
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